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システム建築とは
ここでは、倉庫の工法のひとつであるシステム建築について詳しく解説をしていきます。システム建築の定義や特徴、また、システム建築倉庫のメリット、デメリット、システム建築倉庫がおすすめできるケースなどをまとめているので、ぜひ参考にしてください。

http://www.yokogawa-yess.co.jp/archives/production/6449
システム建築とは、建物の部材を徹底的に標準化することで品質を安定させ、建築コストの軽減や工期短縮を図った建築工法です。コンピュータで自動化できるように“システム化”し、“商品化”されています。
目次
システム建築の特徴と費用
「こんな倉庫を造りたい」という要望に応じてコンピュータが可能なかぎり自動で設計・見積もり・生産を行うシステム建築。建設にあたって想定される検討事項や仕様等があらかじめ「標準化」されているため、高品質かつ短工期・低価格を実現できます。
東京都内で施工した場合の坪単価は、在来工法よりも1万5,000円ほど安くなります。「短い期間で高品質な倉庫を建てたい」「外観やデザインにはこだわりがない」という方に向いている建築方法なので、もし細部までこだわりたい場合は在来工法を選んだほうが良いでしょう。
また、一定の規格はあるもののCADによるパーツ設計ができるため、環境やニーズに沿った工場を建てられる柔軟性も備えています。さらに、耐久性が高く、鉄骨造とほぼ同クラスの長寿命を誇るのもポイントです。次のページにシステム建築の倉庫を建てるうえでかかる費用を詳しくまとめているのでチェックしてみてください。
システム建築倉庫のメリット
標準化されているため見積もりなどを早期に作成できる
システム建築は建築に必要な部材が標準化されており、一連の流れがシステム化されていることが特徴です。そのため、大規模倉庫を建てたい場合も見積もりなどが速やかに作成できるようになっており、コストや工期の比較検討をしたい場合にも有利という点はメリットです。
CADシステムを使ってスピーディな設計・デザインが可能
システム建築の設計はCADシステムを使って行われます。そのため、PC画面上でクライアントのニーズを反映させた倉庫を的確にプランニングできるようになっており、既存のデータを反映させて適切な設計を迅速に作成できることもポイントです。設計が完了した時点で施工図や製作図、見積書などが自動的に作成・処理されることもメリットといえます。
そのほか、設置環境や土地形状などに合わせて柔軟に設計変更を行えることも重要です。
ライン生産によるパーツ製造で倉庫を安定供給
システム建築に用いる部材は工場のライン生産によって製造されており、エンジニアのスキルや経験に部材の品質が左右される心配はありません。
また、大量生産性に優れているため、大規模倉庫を建てたい場合や複数箇所に同一の倉庫を展開したい場合などにおいても、コストの削減や工期の短縮を検討しやすいことはメリットです。
耐久性や耐震性に優れて寿命が長い
耐久性や耐震性を考慮して施工法が標準化されており、基本的に長寿命を期待できるだけでなく、台風や積雪など地域環境に合わせた自然災害リスクに備えやすいことも特徴です。
また、併設や増設などを行いやすいため、徐々に倉庫の規模を拡大していきたいと考えているような計画にも有用性があります。
システム建築倉庫のデメリット
デザインの自由度はあまりない
システム建築は部材の製造や設計、施工など一連の流れがシステム化されており、短期間で倉庫としてのメリットを追求しやすい反面、デザイン性にこだわった倉庫の実現には向いていないというデメリットもあります。
オリジナリティーを追求したり、コストを抑えながらデザイン面でも工夫したりしたいという場合、合理性に特化したシステム建築では対応しづらいという点はデメリットです。
単なる倉庫としての利用だけでなく、完全自由設計の建物として物件活用をしたい場合、在来工法などの検討が必要となるでしょう。
設計変更が可能な範囲に制限もある
CADシステムを活用して、仕様の途中変更をスムーズに反映させたり、クライアントのニーズを追求した設計を行ったりしやすいシステム建築ですが、どうしてもシステム化されている以上、変更可能な範囲に制限があることも事実です。そのため、たとえば倉庫の一部のみを複数階層にしたり、狭小地など変形地の形状に合わせて倉庫の形も不整形にしたりといったニーズに対しては、現実的に難易度が高くなってしまいます。
また、上階や屋根のうえに高重量の設備やものを設置するといった目的にも不向きです。
システム建築で倉庫を建てられる会社
システム建築を手掛けている会社は全国に数多く存在します。そのため、会社選びに苦戦されている方も多いのではないでしょうか。またシステム建築と同じく短工期・低コストな「プレハブ建築」や「テント倉庫」と迷っている方も多いでしょう。
ここでは、おすすめのシステム建築会社を全国からピックアップしています。会社の強みや特徴を掲載していますので、ぜひ参考にしてください。テント倉庫に対応している会社やプレハブ建築に対応している会社と併せてチェックしてみてください。
立てる前に知っておきたい!システム建築倉庫の基礎知識
システム建築倉庫の工期は?
システム建築倉庫の工期は、基本的に4ヶ月程度とされています。建築する規模や業者にもよりますが、従来工法と比較すると20%の工期カットが実現できます。無駄のないシンプルさと、高品質で機能性を満たした倉庫や工場を短期で建てられるのが魅力です。
システム建築倉庫では、丈夫で耐用年数にも優れた倉庫を建てられる反面、プレハブ建築倉庫やテント倉庫よりも工期が長くなりやすいというデメリットもあります。そのため、最初にメリットやデメリットを充分に考慮しておくことが大切でしょう。工期についての詳しいフローはこちらから確認できます。
システム建築倉庫の耐久性・耐震性
工期が短いという理由で、耐久性や耐震性に不安をもつ方も少なくないでしょう。システム建築では強度の高い材料を開発しているため、少ない部材でも地震や災害に十分な耐久性を誇ります。また部材の品質が統一されているので、質の高い施工がスタンダードとなっている点も魅力です。
一般的な鉄骨を用いられたシステム建築倉庫では、骨格材の厚さによって法定耐用年数が定められています。
骨格材の厚さが「3mmを超え4mm以下」の場合は24年、「4mmを超える」場合は31年が法定耐用年数です。
とはいえ、システム建築倉庫の耐久性は、建築後のメンテナンスによって左右されます。耐久性や耐震性についてもっと詳しく知りたい方は以下のページをチェックしてみてください。
システム建築倉庫でできること
空間を大きく使える多様性あり
システム建築は大規模な倉庫のほかレジャー施設など、大型の低層施設の利用に適しています。建物の間柱なしで空間を利用できる構造のため、活用幅が広いのが特徴。システム建築を利用した事例には、馬術競技施設や物流倉庫、工場があります。
大量の商品や大型の動物を移動させるためには軒高を高くする必要がありますが、それに対応できる構造に柔軟に変化させられるためです。
軒高の建物例の中には、大型スーパーなどの施設もあります。設計と建築の時間が短いため、事業のスケジュールが立てやすいと近年多くの商業施設に取り入れられています。
増設・併設がしやすい
増築できるのもシステム建築の強みです。工場を建てたあとしばらくして倉庫を増設したり、冷凍・冷蔵庫倉庫に事務所を併設したりと、あとから必要になった建物を増設しやすくなっています。
システム建築は建物の構成要素である鉄骨、屋根、外壁など部材の寸法、また配置がシステム化されているため、さまざまな設計に柔軟に対応できます。
さらに低層建物なら2階建てなどの集合住宅の建設にも対応できるので、近年では短工期での竣工が求められる、高齢者サービス専用の施設にもシステム建築が多く取り入れられるようになってきました。
システム建築倉庫でできないこと
屋上への設備搭載は荷重設計が必要
システム建築倉庫は太陽光発電や屋上の緑化などにも幅広く対応できますが、太陽光パネルや緑化カセットは、製品によって重量が異なります。設計段階であらかじめその重量を見込んでいないと、あとから搭載できないケースがあるので注意が必要です。
増設や併設のケースでも、1階部分や既存の建物内であれば問題ありませんが、2階層に増築したい場合、荷重に合わせた設備にするために強度を確認しなければなりません。場合によっては増設できないこともあるでしょう。
システム建築倉庫が導入されている主な現場
物流業界
物流倉庫は、柱のない大空間で作業しやすい環境が求められます。システム建築なら、柱のない100mを超える大スパンの倉庫建築も実現可能。無駄のないレイアウトで作業効率アップが図れます。
食品業界
農作物の保管倉庫として利用する場合は、選別する作業スペースや事務スペースも必要になります。システム建築は、用途に合わせて柔軟に設計・増設できるため、多くの食品業界で重宝されているのです。もちろん低温保管や冷蔵・冷凍といった温度管理もできます。
システム建築を利用した倉庫の事例を紹介!
事例1 倉庫・物流センターの建築事例

(https://www.jfe-civil.com/system/metalbuilding/case-cat/warehouse/002.html)
2012年9月に福岡県古賀市で倉庫・物流センターとして建築された、システム建築倉庫の事例です。1,107m2の延床面積に、二重ハゼ構造の屋根パネルやフレーム・システムが採用され、大規模倉庫ながらコスト削減や短期化が追求されています。
事例2 倉庫・物流センターの建築事例

(https://www.jfe-civil.com/system/metalbuilding/case-cat/warehouse/008.html)
2012年1月に石川県金沢市で新築された、ボトリングシステム開発・製造のためのシステム建築倉庫事例です。ブルーの外観が印象的な壁には、芯材にロックウールが採用されており、断熱性や遮音性にもこだわられています。
事例3 鋼管保管倉庫の建築事例

(https://www.sysken-kawada.jp/case/?id=1454479900-509908)
2006年11月に兵庫県で新築された、鋼管保管倉庫用のシステム建築倉庫です。延床面積2,913m2という大規模倉庫ながら、サッシに縦連窓を採用したうえ、屋根にはトップライトを複数設置して、倉庫内の明るさが保たれています。
事例4 大規模営業用倉庫の事例

(https://www.sysken-kawada.jp/case/?id=1459239111-649575)
佐賀県で2015年11月に建築された延床面積6,260m2のシステム建築倉庫です。広大な空間から柱を排除して、倉庫内部を自由に使えるよう配慮されおり、グラスウール壁材と空調設備で温湿度管理がしやすいことも特徴です。
事例5 新築システム建築倉庫の事例

(https://www.core-system.co.jp/performance/940/)
栃木県宇都宮市において2006年5月に新築された、ガラス製品・プラスチック製品メーカーのシステム建築倉庫です。間口50.6m×桁行27.9m×軒高9.0mのサイズに加えて、幅広の庇を有する荷さばき所も備えています。
事例6 500坪のシステム建築倉庫の事例

(https://www.core-system.co.jp/performance/660/)
千葉県香取市において2009年3月に建てられた、延床面積500坪のシステム建築倉庫です。基礎工事に杭工法を要しないうえ、内部に中間柱が1つも設けられておらず、広々とした大空間を自由に使いやすいことが魅力です。
事例7 大庇付きシステム建築倉庫の事例

(https://www.ganko.co.jp/works/detail004.php)
山梨県笛吹市にあるシステム建築倉庫の事例です。延床面積145.5坪に軒高6.7mという大規模倉庫でありながら、施工期間およそ2ヶ月で新築されており、側面に大きく張り出した庇は先端の支柱が不要な設計となっています。
事例8 801坪の大規模システム建築倉庫の事例

(https://www.ganko.co.jp/works/detail008.php)
千葉県酒々井町で運送業の物流プラットホームとして建築された、801坪の規模を誇るシステム建築倉庫です。軒高10.2mという高さに加えて、端部柱を必要としない幅10mの大庇を有しており、全天候型の拠点になっています。
システム建築と他の工法を比較
システム建築とテント倉庫の違い
設計や建築部材の選定、施工の流れまでシステム化されているシステム建築に対して、テント倉庫は設置予定現場で骨組みを設置し、それにテントシートをかぶせることで完成させる簡易的な建築物です。そのため、テント倉庫はシステム建築よりも工期を短縮しやすく、費用面でもコスト削減によるメリットを追求することができます。
建築物としての頑丈さや設計の自由度の高さはシステム建築に利がありますが、テント倉庫も骨組みや土台、使用するテントシートの素材を工夫することで、耐震性や耐久性、耐候性を追求できるといったポイントは重要です。
システム建築とプレハブ建築の違い
事前に工場で建築や組み立てに必要とされる部材やパーツを製造し、現地へ運んで組み立てるという建築方法がプレハブ建築(プレハブ倉庫)の仕組みです。
一定の規格を持っていることがプレハブ建築の特徴であり、短工期・低コストを目指せる反面、CADによってニーズに合わせた設計をできるシステム建築と比較すると、デザインや間取りなどについて制限があります。また、規格品を組み合わせることで完成させるため、大規模建築物をプレハブだけで建てようと思えば、小規模の場合より費用面でのメリットを得にくいといった性質もあります。
システム建築と在来工法の違い
倉庫としての用途やクライアントのニーズに合わせて、素材や形状をトータルで設計して建築できる建築法が在来工法であり、耐久性や機能性についても予算さえあれば自由に追求することが可能です。
システム建築と在来工法では、建築物としての耐用年数であまり大きな差がありません。しかし工期を比較すると、工程をコンピューターによってシステム化されているシステム建築の方が短くしやすいといった違いもあります。
システム建築の特徴は、どのようなメソッドで工程が合理化されているかにもよるため、企業ごとに違いを確かめることが大切です。
まとめ:短工期×低コストならテント倉庫がおすすめ
長期間の耐久性や耐震性を追求したいのであれば、システム建築や在来工法といった選択肢が有力となるでしょう。また、同規格の小規模保管庫を大量に設置する場合、プレハブ倉庫が便利かも知れません。しかし、予算を抑えつつ事業目的に沿った大型倉庫を短期間で設置したいと考えれば、テント倉庫がおすすめ。加えてテント倉庫には設置場所の条件に適合させやすいというメリットもあります。
ただし、実際にどの建築法を導入すべきか、それぞれの建築法の違いや会社ごとの特徴を比較検討したうえでプランニングするようにしてください。
システム建築倉庫という選択肢は適切?
倉庫や工場、事務所を建てる計画があるとき、長期的に固定した土地で事業を行う計画があるかを軸に建築方法を考えてみることもおすすめです。倉庫内で保管する商品の調温や湿度コントロール、工場や事務所に必要な換気や調温機能は、システム建築以外でも屋根の膜構造やオプション設備で、コストを抑えた設置ができます。
短期的な事業計画や土地活用を検討している方、事業スタート期はなるべく低コストで倉庫を建築したいとお考えの方は、膜構造のみで用途に合わせて対応できるテント倉庫を検討してみる余地もあるでしょう。