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プレハブ建築とは
「プレファブリケーション」という手法を用いてつくられるプレハブ建築。「プレファブリケーション」は「あらかじめ製作すること」と訳されます。つまりプレハブ建築とは、柱や梁、壁や床などのパーツをあらかじめ工場で生産・加工し、建築現場に運んで組み立てる簡易的な建築工法です。
ここでは「プレハブ建築」の特徴、メリット・デメリット、知っておきたい基礎知識などをくわしく解説しています。プレハブ建築の倉庫を建てられる会社も紹介しているので、参考にしてみてください。
プレハブ建築倉庫の特徴と費用
プレハブ建築は「低コスト」「短工期」「長寿命」という3つが揃っているのが特徴です。最近は防音・防寒や強度等の機能面も改善されてきています。
その一方で、あらかじめ生産しておいたパーツを使用して造ることになるため、デザインや設計の自由度は低め。柱の少ない設計にするのは難しいため、物品の保管・運搬を行う上で柱が邪魔になってしまうこともあるでしょう。
プレハブ建築の費用はエリアや面積、構造によって異なります。また内装や電気・水道工事などを依頼したい場合は、その費用が別途必要になるケースも。
倉庫を建築する場合、施工費はテント倉庫に比べる高めですが、システム建築と比較すると安めです。建築コストを抑えたい方は、建築目的や倉庫を建てるエリアなどに合った工法を選びましょう。
プレハブ建築倉庫のメリット
建築コストが在来工法よりも安い
プレハブ建築倉庫のメリットの1つに、在来工法やシステム建築と比較して施工コストを抑えやすいという点があります。そのため、低コストの倉庫建築を考えている人にとって、プレハブ建築倉庫は検討すべき候補の1つになるかも知れません。
ただし、単純に建築コストだけを見ればテント倉庫の方が安くなるので、実際には総合的なメリット・デメリットを比較検討することが大切です。
比較的工期が短い
プレハブ建築倉庫は、規格化されているパーツをストックしておき、倉庫が必要になった際に組み立てるという方式で建てることができます。つまり、建築の際に新たにパーツを作ったり発注したりする必要がなく、システム建築や在来工法よりも建築にかかる期間も短くできるのです。
一方、テント倉庫と比較すると短工期のメリットを追求しづらいことも事実であり、どのような倉庫が必要なのかニーズをきちんと定めたうえで建築プランを考えるようにしてください。
寿命はおよそ20年
システム建築や在来工法と比べて低コスト・短工期というメリットを持ちながら、プレハブ建築倉庫の寿命はおよそ20年程度とされており、長期間の自社倉庫として利用することができます。
ただし、テント倉庫であっても適切なメンテナンスや修繕などを行っていけば同程度まで寿命を延ばすことも可能とされています。そのため、保管する物品の種類や倉庫を建てる環境など、トータルな要因を考えながらメリットを追求していきましょう。
移設・増設を行いやすい
規格パーツで倉庫の移設や増設を行いやすいという点はメリットです。将来的に倉庫を拡充する計画があったり、一時的に仮設倉庫を用意したりしたいという場合、プレハブ建築倉庫の移設・増設のしやすさは魅力です。
プレハブ建築倉庫のデメリット
建物の設計やデザインに関する自由度が低い
規格化されているパーツを組み立てて建てるというプレハブ建築倉庫において、定型的な倉庫を実現できるということは、同時に決まりきった形状の倉庫しか建てられないというデメリットでもあります。そのため、いかにもプレハブ建築倉庫といった外観で構わないという場合であればともかく、建築物としてのデザイン性や美観などを追求したい場合、プレハブ建築倉庫は向いていないと言わざるを得ません。
また、倉庫を建築する土地の形状が特殊な場合もプレハブ建築倉庫には適合しない可能性が高くなります。
6メートル間隔で柱を設置しなければならない
プレハブ建築倉庫の特徴として、倉庫内に一定間隔(6メートル間隔)で柱を設置しなければならないという点も重要です。
柱が必要になるということは、倉庫の内部空間に余計なものが存在するということであり、倉庫の規模が大きくなるほどデッドスペースになってしまう部分が発生します。また、柱が邪魔になって作業員の動線が限られてしまうこともあるでしょう。
倉庫内の空間を最大限かつ自由に利用したいと考えた場合、どうしてもプレハブ建築倉庫には制限があるということは無視できません。
プレハブ建築倉庫を建てられる会社
プレハブ建築倉庫の業者選びに苦戦されている担当者の方に向け、プレハブ建築メーカー30社を紹介しています。プレハブ建築を採用している会社は実に多く、また技術や規模においても各社の特色があるため、どこに依頼するか迷ってしまう方も多いでしょう。
工事が始まってから簡単にやり直すことはできないため、依頼する業者は慎重に選ぶことが大切です。
番外編!レンタル・リースできるプレハブ倉庫
プレハブ建築倉庫ではレンタルやリースを活用可能です。ただし、レンタルやリースには契約期間の長さや途中解約の可否、金額などでそれぞれ違いがあり、目的や予算に合わせて適切に選択しなければいけません。
また、プレハブ建築倉庫の業者によっても契約内容に差があるため、それぞれの会社の特徴も比較しておきましょう。
立てる前に知っておきたい!プレハブ建築倉庫の基礎知識
プレハブ建築倉庫の工期は?
プレハブ建築倉庫の工期はおよそ3か月程度とされています。
システム建築倉庫とテント倉庫の工期と比べると、真ん中くらいに当たるタイプがプレハブ建築倉庫です。
プレハブ建築はあらかじめ柱や梁、壁や床などのパーツを工場で生産・加工するため、現場の工期自体は短い傾向があります。また、現場で働く人たちの作業日数も少ないため、人件費コストを抑えることも可能です。「工期=建築コスト」といっても過言ではありません。ただし、工程としてはヒアリングや現地確認、設計、申請など大きく8種類のステップがあり、それぞれにかかる時間によって工期も変わるため、注意しましょう。
プレハブ倉庫を建てる際の一般的な建築フローと工期をまとめているため、気になる方はチェックしてみてください。
プレハブ建築倉庫の耐久性・耐震性は?
工場で規格部材を製造しておき、現場でそれらを組み立てるだけというプレハブ倉庫では、一般的に軽量鉄骨が使用されます。
軽量鉄骨造の建物の耐久性や耐震性は、鉄筋コンクリート造や木造の建築物の中間にあると考えられています。ただし、メンテナンスをきっちりと行えば大幅に耐用年数を延ばすことができる点も特徴です。
プレハブ建築では増築や増床などが簡単にできるため、平均50年近く使用できると言われています。ただし、錆に弱いという弱点もあり、錆が発生すると耐久性や耐震性も下がってしまうため、日頃からメンテナンスを欠かさないことが大切です。次のページにプレハブ倉庫の耐久性・耐震性について詳しくまとめているので、参考にしてみてください。
プレハブ倉庫の構造や消防法基準は?
プレハブ倉庫は構造部材によって、木質系・鉄鋼系・コンクリート系・ユニット系の4種類に分けられます。プレハブは建築基準法で「建築物」と定められていますので、原則として建築確認申請が必要です。ただし一部の要件を満たすと、申請が不要なケースもあります。
消防法では延べ面積や窓の有無に応じて、導入すべき設備が決められています。延べ面積が150平方メートル以上であれば消火器が必要、1,000平方メートルであれば通報装置が必要になるため、建築条件に合わせて消化法の基準も確認しておきましょう。
プレハブ建築倉庫でできること
プレハブ建築倉庫の用途
工期が早いという特徴を活かし、おもに現場事務所や仮設店舗として使われることが多いです。プレハブ建築と聞くと安物住宅や仮設住宅のイメージを持ちますが、近年では高級化かつローコストで建てるプレハブ住宅の実現がテーマとして掲げられているのだとか。現在はアパートやマンションもプレハブ工法で作られているものが数多くあり、プレハブ建築倉庫が利用されるフィールドは幅広くなってきています。
プレハブ建築倉庫が使われている業界
住宅だけでなく、さまざまな業界で活躍しているプレハブ建築倉庫。建築業界では工場や作業場として、不動産業界ではショールームとして使われています。また、学校の部活の部室や更衣室、病院の調剤薬局や守衛室に利用されることも。業界以外では駐車場やトランクルーム、地域の集会所や学習塾などに使われるケースも珍しくありません。
プレハブ建築倉庫に防音や遮音性などが加えることができれば、音楽スタジオやライブハウスといったエンターテイメント目的での利用も増えてきそうです。
プレハブ建築倉庫でできないこと
プレハブ建築倉庫が使われていない業界
飲食店や小売店などの業界では、プレハブ建築倉庫は使われない傾向があるようです。プレハブ建築倉庫は形状の自由度がききにくいというデメリットがあるため、無駄な空間ができてしまう場合があります。必要以上の空間が生じれば温度や湿度の調整を行なう空調の稼働率があがり、電気代が無駄にかかってしまうことに。また、プレハブ建築倉庫は6m間隔で柱が必要となり邪魔になることから、在庫の運搬が頻繁に行なわれる飲食店や小売店には不向きと言えます。
飲食店や小売業に不向きな理由
プレハブ建築倉庫には、建築現場の仮設事務所や勉強部屋などに利用することを想定した安価な建物があります。費用が抑えられる点は良いのですが、安価なプレハブ建築倉庫は必要最低限のつくりとなっているので、高い耐久性やデザイン性が期待できません。駐車場や事務所などに利用する程度なら問題ありませんが、居心地の良さである快適性や外観・内装のデザイン性が求められる飲食店や小売業といった客商売の業界には不向きです。
プレハブ建築倉庫という選択肢は適切?
プレハブ建築倉庫は「工期が短い」「コストが抑えられる」というメリットから、今ではさまざまな業界で活躍しています。現場事務所や仮設店舗として利用されることが多いですが、もし倉庫として利用するならテント倉庫を検討してみるのもいいでしょう。テント倉庫もプレハブ建築倉庫と同様に、工期が短くてコストが抑えられるといったメリットがあります。プレハブ建築倉庫と比べて軽量なので軟弱地盤の設置にも向いており、立地状況によってはテント倉庫の利用もアリです。
プレハブ建築を利用した倉庫の事例を紹介!
事例1 機材倉庫の新築事例
(http://www.nisseibuild.co.jp/search/201204/52042400102)
およそ100坪の平屋プレハブ建築倉庫の新築事例です。サイズは5間×20間で柱高5800mmとなっており、1階建てながらビッグサイズの倉庫となっています。また、同時に事務所棟や工場棟、控え室などもまとめて建築されました。
事例2 野菜ハウス新築事例
(http://www.nisseibuild.co.jp/search/201301/52004250101)
サイズ8間×11間で柱高3390mmの平屋倉庫です。野菜を保管するためのフレッシュハウスとして建築されており、屋根の上には太陽光発電パネル用架台が設置されて、太陽光発電を同時に叶えていることもポイントです。
事例3 プレハブ建築倉庫事例
(http://www.showa-house.co.jp/work/archives/1112)
初期コストを抑えられるプレハブ建築倉庫として、大分県の研究センターに設置されました。防音・断熱効果も考慮されている20坪の倉庫であり、建物本体の組立が1日で完了したという工期の短さも特徴となっています。
事例4 プレハブ建築倉庫事例
(http://www.showa-house.co.jp/work/archives/704)
佐賀県に建てられた約7.5坪のプレハブ建築倉庫の事例です。規格化されているパーツを使用することでコストを抑えつつ、移設・増設・解体などが容易で機能性に秀でているという点も見逃せません。用途を選べることも重要です。
事例5 低温農業倉庫の事例
(http://www.kohri.co.jp/works/20120306_000530.shtml)
埼玉県において低温農業倉庫として建築された倉庫の事例です。プレハブ建築の特性を追求してシステム化しており、安定性と自由度の両方にこだわっていることがポイントといえます。
事例6 米用低温倉庫の事例
(http://www.kohri.co.jp/works/20100930_000522.shtml)
日本有数の米所である新潟県で新築された米用低温倉庫の新築事例です。機械や低温空調設備の導入といった利便性も備えており、農業分野においても利用メリットを追求しやすい倉庫となりました。
事例7 4連棟平屋倉庫の事例
(https://www.sankyofrontier.com/unithouse/showcase/detail.php?product_id=1157&usage=4&md=se)
茨城県牛久市に建築された、奥行き9624m×幅5400m×柱高2650mのプレハブ建築倉庫の事例です。プレハブ1棟が4つ連なっている大型倉庫として利用されており、オプションとして開口部にシャッターも設けられました。
事例8 少量危険物保管庫の事例
(https://www.sankyofrontier.com/unithouse/showcase/detail.php?product_id=1578&usage=4&md=se)
少量危険物を保管する目的で、特注物件として建築されたプレハブ建築倉庫の事例です。サイズは奥行き4010m×幅1650m×柱高2650mとなっており、火気厳禁の看板や消火器、倉庫側部にダクトなどが追加されている点が特徴です。
プレハブ建築と他の工法を比較
プレハブ建築とテント倉庫の違い
事前に工場で組み立てた建築部材を建築現場へ運んで組み立てるプレハブ建築に対して、テント倉庫は現場で骨組みを構築したうえにシート状の膜をかぶせて設置します。そのため、テント倉庫は組み立てが簡便で費用的にも安く済むといった特徴がある一方、プレハブ建築の方が保管できる品物が多いといった違いがあります。
ただし、テント倉庫でも使用する膜や鋼材などの素材を工夫することで、耐久性や安全性を高めることもできるため、どの工法を選択すべきか自社が求めるニーズを事前にしっかりと把握したうえで比較検討することが大切です。
プレハブ建築とシステム建築倉庫の違い
コンピュータによって建築部材の種類や形状のベースを統一し、設計から施工までをシステム化することで、大規模倉庫や特殊形状の建築物にも柔軟に対応できるのがシステム建築倉庫の特徴です。反面、プレハブ建築がおよそ2,200万円(500㎡あたり)から建てられるのに対して、システム建築倉庫では3,700万円程度(500㎡あたり)が必要になるなど、一般的にシステム建築倉庫の方が高くなります(※)。
保管できる内容物については大きな違いがないものの、プレハブ建築とシステム建築倉庫のどちらを選択すべきかは耐久性やコストも考慮に入れたうえで比較検討するようにしてください。
プレハブ建築と在来工法の違い
すでに規格化された建築部材や形状をベースとして倉庫を建てるのでなく、自由に形状をデザインしたり施設環境を設計したりできる点が在来工法の強みです。そのため、特殊なニーズによって従来のシステム建築倉庫やプレハブ倉庫などで対応できない場合でも、在来工法であれば目的の倉庫を実現できる可能性があります。
しかし、建築物の自由度に比例して価格面や工期面も増大しがちという問題があり、現地で建築部材を組み立てるプレハブ建築か、一から設計して建てていく在来工法にすべきかは、目的や必要性に合わせて考えることが大切です。
プレハブ建築とコンテナハウスの違い
コンテナハウスは、頑強な鉄板や鋼板で構成された建築物であり、事前に組み立てられた状態で製造工場から現地まで運ばれるという点が特徴です。そのため、現地で建築部材を組み立てるプレハブ建築とは異なり、建築にかかる期間を省略できます。
反面、すでに組み立てられた状態のコンテナハウスは、場所や環境によって移動・設置できないといった問題があり、サイズにも制限があります。またコンテナハウスで使用されている建築部材は、プレハブ建築のものよりも頑強であり、トータルのコスト面ではコンテナハウスの方が高くなりがちということもポイントです。